NPO法人FLAG

http://www.npoflag.com/

Jan. 29 2022

福生を拠点に活動するNPO法人FLAGが考える、まちづくりのこと、土地のアイデンティティのこと。

 

広告を作るより、街の経済を作りたかった

東京都福生市。“横田基地のある街”としておなじみの福生には、独特のムードが流れている。ロードムービーに登場しそうなダイナーやカフェが並ぶさまは、まるでアメリカの郊外にあるどこかの街にさまよい込んだよう。とりわけシンボリックな存在がアメリカンハウス(米軍ハウス)だ。1950年代、基地に駐留する米兵のために建てられたアメリカンハウスが、この街独自のカルチャーを育んだという。

福生のクリエイティブな地域活性化を担うNPO法人FLAGの立ち上げメンバーのひとりが、クリエイティブディレクターの佐藤竜馬さん。自身も福生出身で、アメリカンハウス・カルチャーの薫陶を受けたひとり。「米兵が去った後、70年代のヒッピー・カルチャーの洗礼を受けたミュージシャンやクリエイターがアメリカンハウスをシェアして暮らすようになり、やがて小さなコミュニティを築いていきました。僕の父はアートディレクターだったのですが、コピーライターの友人とアメリカンハウスで共同生活を送っていたことがあって、アメリカンハウスに集まる人々やそのコミュニティにまつわるエピソードを聞かされて育ちました」

しかし時代の流れとともに基地ビジネスで栄えた福生はその独自性を失い、よくある郊外のベッドタウンに変貌してしまう。佐藤さん自身、成長するにつれて自分の生まれ育った地元への思いは次第に薄れ、広告業界で働くようになるころには思い出すこともほとんどなくなってしまった。

そんな佐藤さんが再び地域やローカルに目を向けるようになったのは、10年前のことである。「東日本大震災を経験して自分自身のものの見方や価値観が変わり、広告の仕事の表層的な表現に限界を感じるようになっていました。もっと本質的なものごとに寄り添える仕事があるんじゃないか。そんな葛藤のなかで、興味の対象が地域の価値を創造するまちづくりに向かっていったんです」

 

 

“福生ドリーム”を作り出せ!

自分の足元を見つめ直すうちに、福生ならではの独自性や他にはないカルチャーの価値をあらためて噛みしめるようになったという佐藤さん。NPO法人FLAGとして、自分たちらしいクリエイティブな発想を取り入れたまちづくりに思いを巡らせた時、かつての福生にもあったヒッピーカルチャーをアップデートして、この土地のアイデンティティやシビックプライドにできないか、そう考えた。

「具体的には、70年代のアメリカンハウスに息づいていたインディペンデントなヒップカルチャーや、ブロックパーティに代表されるような濃密な近所付き合いです。当時は隣近所とバーベキューをしたり、ビールを持って互いを訪ねたり、そういう関わりあいの中からビジネスや社会をより良くするアイデアが生まれたといいます。濃密でスローだったあの時代のライフスタイルを現代に提案できないかと思いました」

そうして、西多摩地区の生産者と地域経済を支えるファーマーズ・マーケットの開催、アメリカンハウスのコンセプトを踏襲しつつも現在の建築基準法で設計した新しいハウスの企画・プロデュース、産学連携のプロジェクトなどを続々と立ち上げる。参考にしたのは、例えば欧米ではオレゴン州ポートランドのスモールメーカーやガレージメーカーのあり方だ。ポートランドにはコーヒー、クラフトビール、自転車など、多彩なジャンルで小規模ビジネスを営む個性的な事業者が活躍している。彼らのビジネスのサイズ感や独自性が福生にマッチしているように思えた。

「アメリカの場合、メーカー、ファウンダー、投資家がいいバランスで関わり合っていて、メーカーの理想やファウンダーのアイデアに投資家が共感することでアメリカンドリームが起こります。日本ではそれぞれの棲み分けがはっきりしていて混じり合うことが少ないですが、僕たちの役目はそれを引っ掻き回して、アメリカンドリームならぬ“福生ドリーム”の下地を作ることなんです」ときに閉塞的になりがちな社会に、FLAGが風穴を開けていく。

 

 

まちづくりの本質は、価値づくり

FLAGの立ち上げから10年。一昨年には長く携わってきたクリエイティブエージェンシーの仕事も辞し、FLAGに専念することを決めた。クライアントありきの広告業界では、締め切りのために内容について妥協せざるを得なかったり、収益優先で信念を曲げたりということも少なくなかった。しかしNPOというプラットフォームなら、そのときに感じたもやもやを解消できるかもしれないと考えている。

「FLAGでは予定調和のゴールを目指すことはしません。クライアントの顔色を伺ってクールでないものをよしとすることもしません。このプロジェクトの本質は何か。いまの世の中できちんと機能するのか、自分たちはそのプロジェクトにわくわくし続けられるのか。それを常に自問し、クライアントともその思いを共有します」

一昨年にはFLAGで管理するフードトラックエリア「DELTA EAST」に「DOSUKOI PIZZA」をオープンした。初めて自分たちで展開する飲食事業、戸惑うことも少なくないけれど、これまで手掛けてきた食のプロデュース業とはまた違った手応えを感じている。日々、消費者とやり取りしてその嗜好を探る中で、アイデア出しやマーケティングの精度が高まっていることを実感できているからだ。

佐藤さんにとってNPO法人とは、「妥協せずに本当の価値を貫ける法人格」だという。FLAGの目標はそれぞれの事業で収益を上げ、会社化すること。けれどその過程において、ものの価値をないがしろにすることはない。大切にしているのは本質的であること、そして自分たちが高揚し続けること。「このフィーリングを共有できる事業者のネットワークを地域の中にたくさん生み出して、それを街の個性として地域資源を生かしていく。それがアイデンティティとなり、やがてはシビックプライドや地域のカルチャーとして唯一無二の価値となり、街の経済を循環させていく。そうしたまちづくりのあり方は、やがて全国に広がっていくでしょう。僕たちはそう信じています」

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